中間管理職に、このような傾向はありませんか?
- 「報告」は完璧だが、「提案」や「意見」がない
- 自部門の目標は達成しても、他部門との摩擦や対立が増えている
- 社長が不在の時、会社全体のスピードが目に見えて落ちる
なぜ“経営がわからない管理職”が増えているのか?
「売上は達成しましたが、利益は出ていません」――。
経営会議でそんな報告を聞いたことはないでしょうか。彼らは決して怠けているわけではありません。真面目に仕事をこなし、部下の面倒を見て、現場を守っています。にもかかわらず、「経営」を理解していない。つまり、「会社全体をどう動かすか」という視点を持てていないのです。
その結果、経営者の意思決定と現場の行動の間に、目に見えない“意識の断層”が生まれます。上は「なぜ動かない」と嘆き、下は「何を言いたいのかわからない」と不満を抱く。この断層こそ、組織が止まる最大の原因です。
では、なぜ“経営がわからない管理職”がこんなにも多いのでしょうか。その答えは、個人の資質ではなく、「構造」にあります。
管理職が「経営を理解できない」3つの構造的理由
評価制度が「部分最適」を促している
多くの企業では、管理職の評価が「自部署の成果」で決まります。
「部の売上」「部のコスト削減」「部下の定着率」など――。
これでは、全社最適ではなく“部門最適”の行動が当然になり、結果として部門間の無駄な摩擦と対立を生み、組織全体の利益を損なう方向へ進んでしまうのです。たとえば、営業部は「売上を上げる」ことを優先し、生産部は「コストを下げる」ことを最優先にする。結果、組織全体としては利益を損なう方向へ進んでしまうのです。
会議文化が“報告”中心で、意思決定プロセスを共有していない
経営会議でよく見られる光景があります。
各部門長が持ち時間で「報告」し、経営者が「指示」を出す。
この構造では、管理職は経営者の思考プロセスを学べません。「なぜその判断になったのか」「他の選択肢は何だったのか」――その“理由”が共有されないのです。結果として、会議は「指示の伝達会」に終始し、管理職は「指示待ちの優等生」に育ってしまいます。
経営者自身が“数字の背景”を説明していない
「利益率を5%上げろ」「人件費を2%削減しろ」――。
こうした数字目標は重要ですが、数字だけを伝えても経営は動きません。重要なのは「なぜその数字なのか」「会社の未来にどう関係するのか」という背景です。経営者がその“ストーリー”を語らなければ、管理職は単なる「数字合わせ」に走り、経営判断の意図を理解できません。
経営視点を育てる第一歩は、“数字の意味を伝える”ことなのです。
経営視点とは何か――「全体最適」を意思決定できる力
「経営視点」と聞くと、単に「経営者のように考えること」と思われがちです。しかし、それは少し違います。
経営視点とは、「会社という仕組みの中で、最も価値を生む判断をする力」です。「社長の頭の中のロジック」を理解し、現場の視点を超えた判断ができる力(意思決定能力)です。
つまり、“全体最適”を意識した意思決定ができるかどうか、が経営視点の要諦なのです。
経営視点①:数字ではなく「構造」を見る力
たとえば、売上が伸びているのに利益が減っているとします。数字を“結果”として捉えるだけでは、経営的な判断はできません。「なぜ利益率が下がったのか」「コスト構造のどこに問題があるのか」を見抜く。これが“構造を見る力”です。
経営視点②:「部門」ではなく「全社最適」で判断する姿勢
経営視点を持つ管理職は、自部署の成果だけでなく、他部署の影響まで考えます。
「うちの部の目標は達成したが、結果として全社利益を下げた」
この視点に立てるかどうかが、“経営と現場”をつなぐ境目です。
経営視点③:「短期成果」と「中長期価値」の両立思考
経営者の判断の多くは、「今の利益」と「将来の投資」のバランスです。短期の数字にとらわれすぎると、長期の成長力を失います。経営視点を持つ管理職は、目の前の数字を見つつ、3年後・5年後を見ています。
「経営感覚を持つミドル層」へと育てる実践アプローチ
経営視点は“教科書”では身につきません。会議で話を聞くだけでは、意識は変わらないのです。必要なのは、「体験」と「思考の共有」。つまり、“経営を疑似体験”すること。経営者の視点をミドル層に強制的にインストールする“経営シミュレーション”を体感することです。
経営会議の“擬似体験”で意思決定の構造を体感する
経営者がどのように情報を集め、どのような基準で決断しているのか。それを模擬的に体験するだけで、視座が変わります。たとえば、架空の経営課題を設定し、管理職が「経営会議メンバー」として意思決定を行う。
利益構造、人材配置、投資判断――。
現場の視点だけでは見えなかった“全体のバランス”に気づきます。
財務シミュレーション演習で「数字の裏」を理解する
PLやBSの読み方を学ぶのではなく、「意思決定が数字にどう影響するか」を体感するのが目的です。
「採用を増やしたら利益は?」「外注を減らしたらキャッシュは?」
数字が“経営判断の結果”であることを、体験的に理解します。
自部署の戦略立案ワークで「経営に直結する思考」を定着させる
最後に、自部署の目標を“経営戦略の一部”として再設計します。経営理念や全社方針を読み解き、その上で「自部署はどのように貢献するか」を自らの言葉で語る。このプロセスで、ミドル層は初めて“経営と現場をつなぐ”存在になります。
経営者が“見せる”ことから始まる組織変革
経営者が孤独なのは、「誰も経営の視点で語ってくれない」からです。しかし、その原因は、“経営者が見せてこなかった”ことにあります。
経営判断の背景、数字の意味、戦略の意図。
それらを共有し、議論の土俵に引き上げることで、管理職は「現場のリーダー」から「経営の担い手」へと変わります。経営視点は、教え込むものではありません。“ともに考え、ともに決める”プロセスの中でしか育たないのです。
ミドル層育成は、社長が孤独でなくなるための投資です。中間管理職を単なる「現場のまとめ役」ではなく、「経営の共同推進者」へと変革させましょう。社長の代わりに「全体最適の判断」を下せる幹部を、「数字の裏側」を語れる幹部を、今すぐ育成しましょう。



コメント