「3C分析なんて難しそう……」その不安、すべて誤解です。
金融機関や商工会議所、行政機関の担当者から、
「事業計画書には3C分析を入れたほうが良いですよ」
と言われたものの、
- そもそも3C分析って何?
- やったほうが良いのはわかるけれど、どうやるの?
- ウチみたいな小さな事業でも必要なの?
とモヤモヤしたことはありませんか?
そもそも――あなたは経営者として毎日、現場でお客様と向き合い、汗を流しています。事業計画書を書くために、デスクで数字とにらめっこしたり、聞いたこともない専門用語を調べる余裕など、無きに等しいはずです。
結論を先に申し上げると、実は小規模企業・個人事業主ほど3C分析は役に立ちます。また、難しい専門知識や大量のデータは必要ありません。
この記事では、小規模企業に最適化した「かんたん3C分析」の方法を、例を使いながら“誰でもできる形”に整理してお伝えします。
多くの小規模企業が抱える、3C分析の“つまずき”とは?
金融機関から言われても、正直どうしていいかわからない
事業計画書の提出を求められた際、「顧客(市場)・競合・自社を分析してください」と担当者に言われることがあります。いわゆる3C分析(顧客=Customer、競合=Competitor、自社=Company)です。しかし、正直「どこから手を付けていいか分からない」というのが本音ではないでしょうか。
「市場の動向を分析しろと言われても、大規模な統計データなんて手に入らないし……」
「競合店を細かく調査する時間があったら、目の前の注文をこなしたい!」
と、モヤモヤしてしまうはずです。
経営者は毎日、現場と数字とお客様対応で手いっぱいです。何やら難しそうな市場分析に競合調査……そんな余裕などありません。「簡単な分析で大丈夫です」などと言われても、その“簡単”の基準もわからず、手が止まってしまうのは当然です。
“分析が苦手”なのではなく、知る機会がなかっただけ
多くの経営者が「自分は分析が苦手」だと思い込んでいます。しかし実際には、これまで知る機会・教わる機会がなかっただけです。
3C分析は、
- 商売を続けてきた経験
- お客様から日々聞く声
- 競合店を見てきた実感
これらを“整理するだけ”の作業です。
実は、あなたはすでに3C分析に必要な情報を持っているのです。足りないのは、その情報を取り出して、A4の紙1枚にまとめるための「シンプルな道具」だけです。
なぜ小規模企業の3C分析は、“よくある解説”では役に立たないのか
ネットで検索すると、高度かつ大企業向けの解説が多く出てきます。
しかし、小規模企業は……
- 調査に使える時間が少ない
- 大規模統計や専門データは利用しない
- 経営資源(ヒト・モノ・カネ)が限られている
この現実を無視した説明では、現場には落とし込めません。
そこで必要なのが、小規模企業だからこそ使える、シンプルで実践的な3C分析です。
小規模企業が3C分析に苦しむ本当の理由
「顧客」「競合」「自社」を全て深掘りする時間がない
3C分析を深くやろうとすると、いくら時間があっても足りません。時間がない小規模企業に、本格的・網羅的な分析を求めるのは現実的ではありません。
ネットのテンプレは大企業用
大企業には、大量のデータがあり、市場調査スタッフがいます。その前提で作られたテンプレをそのまま使おうとしても、当然ながら小規模企業には向いておらず無理があり、ほとんど役に立ちません。
大企業は「大規模な調査データ」を基に未来を予測しますが、小規模企業は「現場で培った肌感覚」こそが最強のデータと言えます。大企業向けのテンプレは、この“最強のデータ”を活かせない構造になっているのです。
正しい情報がないまま分析すると、逆に自信が持てない
大企業向けテンプレで時間をかけて作ったとしても、「これで合っているのか……?」と不安だけが残る事業計画書ができあがってしまいます。
しかしながら金融機関・行政機関は、“完璧な分析”を求めているのではなく、 “現場に基づいた、納得感のある整理”の有無を見ています。
彼らが本当に知りたいのは、「なぜ、このお客様に選ばれているのか?」という、あなたの商売の核心です。机上の空論ではなく、あなたの“商売の理由”を整理して示せれば、十分に信頼は得られるのです。
だからこそ、小規模企業には“現場に合った分析”が必要
大量のデータではなく、
- 経営者の経験
- お客様の声
- 競合の観察
この3つだけを使った、小規模企業向けの3C分析こそが一番実用的なのです。
数字が苦手でもできる!小規模企業向け“かんたん3C分析”
まずは「顧客(Customer)」1つだけから始めればいい
3C分析の最初であり、最も重要なのは「顧客」です。
小規模企業の場合、ここを押さえれば7割は完成したと言ってもよいでしょう。
- どんな人が買ってくれているのか?
- 何に困っているのか?
- どんな価値を求めているのか?
現場で見聞きした情報だけで、十分に答えられる内容のはずです。
いつもの常連さんの顔を思い浮かべて、その人があなたの店に「なぜ来ているのか?」を書き出すことこそが、最も説得力ある市場調査になります。
競合調査は“店を見に行く”だけで8割わかる
難しい調査は不要です。競合店を1〜2店ほど見に行けば、ほぼ必要な情報は揃います。
- 価格帯
- 品揃え
- 接客
- にぎわい
- 店の特徴
- 弱み(不便、品不足、専門性の低さなど)
現場で見たこと、感じたことが、最も信頼できる情報です。
自社分析は、“できていないところ探し”ではない
多くの経営者が、「自分の弱みばかり見てしまう」という罠に陥りがちです。
しかし自社分析の目的は、“選ばれている理由”の発見です。
- 店主の人柄
- 手作りのこだわり
- 丁寧な対応
- 地域密着
- 他店にはない小さな強み
こうした“自社らしさ”こそ、金融機関・行政機関は評価します。
あなたの「弱み」は、誰もが真似できる「改善点」に過ぎません。それより重要なのは、他店が絶対に真似できない「個性」です。その「個性」こそが、お客様があなたの店を選ぶ最大の理由、つまり「自社の強み」です。
最後に、3つを重ねて“勝てる場所(KSF)”を見つける
- 顧客ニーズ
- 競合が弱い部分
- 自社が強い部分
この3つが重なるポイントが、あなたの事業が勝てる場所(KSF:重要成功要因) です。
※KSF=Key Success Factor
例を見ると一瞬でわかる!小規模企業の3C分析サンプル
例として、健康志向を売りにした小さなパン屋の3C分析を見てみましょう。
顧客(Customer)
- 健康志向の高齢者
- 「低糖質でも美味しいパンを食べたい」というニーズ
- 近隣の高齢者人口は増加傾向
競合(Competitor)
- 大手チェーン店:安い・便利だが、健康志向ではない
- スーパー:利便性は高いが、専門性が低い
→健康特化の商品が少ない=チャンス
自社(Company)
- 店主が栄養士資格を保有
- 無添加・低糖質の手作りパン
- 丁寧な個別対応が可能
- ただし、立地が駅から離れていて、生産量は少ない
統合するとわかる“勝てる理由(KSF)”
「栄養士監修の健康特化パン」+「丁寧な顧客対応」
これは、大手もスーパーでは真似しづらい強みです。
忙しい経営者でも、半日でできる3C分析のやり方
- 紙1枚に「顧客」「競合」「自社」を書き出す
→自由な形式で問題ありません - 競合は実際に見に行く
→スマホのメモでOK - 顧客の声は“いつもの会話”から拾う
→アンケートまでは不要です - 最後に“自社だけが提供できる価値”を1つ書く
→これが事業計画書の“説得力の源泉”になります
金融機関・行政機関が見ているポイント
金融機関は、「大きい」「速い」「安い」「大量」といった華やかな強みより、「小さくても確実にできる強み」 に好感を持ちやすいものです。なぜなら、派手な強みは「再現性がない」リスクが高いですが、地道な強みは「継続性」と「安定した収益」が約束される可能性が高いからです。
特に次の点は、強い安心材料になります。
- 顧客の具体像が説明できている
- 競合との差が言語化できている
- 自社の価値が「再現性ある強み」として示されている
- 根拠が現場の事実に基づいている
こうした内容があると、事業計画書の信頼性は大きく高まります。
あなたの言葉や経験を「金融機関が納得する言葉」に変換し、整理しましょう。
“迷いながらの経営”から抜け出すために~必ず勝てる理由がある~
3C分析は、決して難しい経営理論ではありません。あなたが日々感じていることを整理するための“道具”です。
小規模企業には、大手には絶対に真似できない、あなただけの強みが必ずあります。その強みを見つけて言語化することで、
- 事業の将来性が明確になる
- 価格の根拠を説明できる
- 金融機関の理解が得られやすくなる
- 行政の支援制度にも通りやすくなる
つまり、経営の“迷い”がなくなり、“自信”を持って前に進めるようになるのです。
どんな小さなお店でも、必ず選ばれる理由があります。その価値に気づき、言語化した瞬間から、あなたの事業は確実に変わり始めます。



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