事業計画書の中でも、特に金融機関・行政機関・投資家の目にとまるのが「マーケティング・販売戦略」のパートです。どんなに良い商品やサービスでも、「どう売るのか」が見えなければ、計画の信頼性は一気に下がってしまいます。
一方で、実際に書こうとすると、こんなお悩みを抱える経営者の方が多いのではないでしょうか。
- 「どのように販路を書けば良いのかわからない」
- 「数字で根拠を示せと言われても、どう計算すればいいのか……」
- 「プロモーションなんて大げさなことはできない」
この記事では、専門的なマーケティング理論を使わなくても、あなたの事業に合わせた「伝わる戦略」を簡潔にまとめる方法をお伝えします。記載例もご紹介しますので、ぜひご自身の事業計画書づくりにお役立てください。
マーケティング・販売戦略とは?
「マーケティング・販売戦略」は、あなたの商品・サービスを、どうやってお客様に知ってもらい、購入してもらうかを説明するパートです。金融機関や投資家は、あなたの「売上の根拠」をこのパートから読み取ります。
「市場にはどんなニーズがあり」「どんなお客様に」「どのような方法で販売するのか」というストーリーが明確であることが大切です。
難しく考える必要はありません。以下の3つのポイントを整理して書けば十分でしょう。
- 販売チャネル(どのように販売するか)
- プロモーション(どのように知ってもらうか)
- 価格設定(どんな価格で売るのか、根拠)
販売チャネル――「どこで、どのように」販売するか
販売チャネルの基本的な考え方
販売チャネルとは、お客様に商品やサービスを届ける経路のことです。
切り口にもよりますが、大きく分けると、次の3つのタイプがあります。
- オンライン販売:自社サイト・ECモール(Amazon、楽天など)・SNS経由など
- オフライン販売:実店舗・展示会・イベント販売など
- 提携販売:他社や団体との協業・業務提携など
あなたの事業に合ったチャネルを選び、なぜそのチャネルが効果的なのかを説明しましょう。
記載のポイント
たとえば以下のように、根拠を数字で補足すると説得力が高まります。
例:「開業エリアの商圏人口は約5万人。そのうち20〜50代女性が約2万人と多く、SNS経由の購買意欲が高い。Instagram広告とECサイトを主軸に販売チャネルを構築する」
数字は、自治体の人口データやSNS広告管理画面の数値など、簡単に入手できるもので構いません。
尚、商圏人口を、「この数字が自分の事業にどれだけ繋がるか」という “現実的な売上予測” に変換できれば、さらに良くなるでしょう。
よくある失敗
「販売経路を複数書きすぎて、焦点がぼやける」ことです。
特に小規模事業の場合は、「まず1つの主力チャネルで確実に売る」方針を明示する方が信頼されやすいでしょう。
プロモーション――「どうやって知ってもらうか」
目的を明確にする
プロモーションは、「お客様に気づいてもらい、興味を持ってもらう」ための活動です。
大きな広告を打つ必要はありません。むしろ、小さくても効果的な方法を選ぶことが大切です。
初心者でも使える具体策
- SNS発信(Instagram・LINE公式など)
- チラシ・ポスティング(地域密着型ビジネス向け)
- 紹介制度の導入(既存顧客の口コミを活用)
- Googleビジネスプロフィール登録(無料で検索露出を強化)
数字で根拠を添える
たとえば以下のように、期待値を数字で表すだけでも十分です。
例:「Instagram投稿を週3回行い、1投稿平均リーチ数500件を想定。フォロワー1000人を目標とし、月間10件の問い合わせを獲得する見込み」
こうした具体的な数字があるだけで、計画の現実味が格段に上がります。
「なんとなく」の目標ではなく、「必ず実行できる」目標へ。それが融資の成功率を高めるのです。
価格設定――「いくらで売るのか、なぜその価格なのか」
価格設定の基本原則
価格は、「原価+利益+お客様が感じる価値」で決まります。
ポイントは、他社と単純比較されないようにすることです。
- 同じ価格帯なら、「品質」や「サポート」で差別化
- 高価格帯なら、「信頼」や「独自性」で納得感を与える
根拠の示し方
価格設定の根拠を数字で見せると、計画に説得力が出ます。
例:「原価1,000円、販売価格3,000円、粗利率約66%。同業他社の平均価格帯は2,500〜3,500円であり、品質面で優位性があるため、適正と判断」
数字が苦手な場合は、“粗利率”だけでもOKです。
粗利率=(販売価格-原価)÷販売価格×100(%)
この数字を入れておくだけでも、金融機関は「利益構造を理解している」と判断しやすくなります。
「根拠ある戦略」で伝わる事業計画書に
マーケティング・販売戦略のパートは、あなたの事業が「現実的に売れる見込みがあるか」を示す最重要部分です。
大切なのは、カッコよく書くことではなく、数字と根拠をもって簡潔に説明することです。
- 販売チャネルは「どこで売るか」を1〜2本に絞る
- プロモーションは「お客様の行動」に合わせて選ぶ
- 価格設定は「根拠のある数字」で納得感を与える
これらの3点を意識すれば、金融機関にも投資家にも「実行力のある計画」として評価されるでしょう。
事業計画書は、あなたの思いやビジョンを“数字と言葉”で形にする大切なツールです。ただ、一人で書こうとすると「どこまで書けばいいのか」「どう数字を出せばいいのか」で行き詰まってしまう方も多いのが実情です。
「この目標数字が甘すぎないか」「本当に達成可能か」などの妥当性、適正な粗利率の設定や原価の算出など、具体的な数字の出し方や戦略の絞り込みに不安がある場合は、専門家に相談しましょう。
あなたの強みを言語化し、「伝わる計画書」に仕上げましょう。



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