現事業を続けるか、転換すべきか――迷える経営者がまず確認すべき3つの視点

経営・ビジネス

「このままで続けるべきか?」と感じたら

「このまま今の事業を続けていていいのか……」

「頑張っているのに、先が見えない」

「もう少し方向を変えたほうがいいのでは?」

こうした不安を抱く経営者は、決して少なくありません。このモヤモヤした不安は、経営者なら誰もが抱える「成長に伴う痛み」とも言えるものです。

特に小規模企業経営者や個人事業主にとって“人生を賭けた事業をやめる”、“方向を変える”という判断はとても重い決断です。

しかし実際には、この大きな迷いを「感覚」や「勢い」で決めてしまい、あとで後悔するケースも少なくありません。迷ったときこそ感情ではなく、冷静に、事実をもとに考えることが大切です。

前回の記事で「見えない赤字」を指摘したように、今回も「見えない不安」を打ち消すための、現事業の方向性を判断するために欠かせない、シンプルな3つの視点をお伝えします。

※『「なんとなく不安」を「確信」に変える!小規模企業の「立て直し」講座』シリーズの第2弾としてお届けします。

第1の視点:市場の変化――「お客様の今」はどう変わったか?

どんなに良い商品やサービスでも、お客様の価値観や生活スタイル、特に「お金の使い方」が変われば、そのままでは通用しなくなることがあります。これはあなたの事業が悪いのではなく、「時代」が変わっただけかもしれません。

たとえば、

  • コロナ禍をきっかけに「外出を控える」傾向が定着した
  • ネットやSNSでの「比較・口コミ」が当たり前になった
  • 価格よりも「体験」や「ストーリー」を重視する人が増えた

こうした市場の変化は、数年単位で着実に進んでいます。

「以前は売れていた」理由が、今では通じなくなっている――水面下で、あなたの事業にも起きているのかもしれません。

現事業の将来性を判断する第一歩は、数字やグラフではなく「今のお客様は何を求めているのか?」を、あなたの目で、耳で、改めて現場を確認することです。

数字やグラフよりも、実際のお客様の「ふとした時の反応」、相談内容、来店理由など――現場で起きていることが何よりの“市場の証拠”になります。

第2の視点:自社の強み――「選ばれている理由」を言えますか?

次に大切なのが、「なぜお客様が自社を選んでいるのか?」という視点です。

多くの経営者が「うちは安いから」「昔からの取引だから」と言いますが、これは本質ではありません。それは“理由”ではなく“結果”に過ぎません。もっと言えば、“お客様が妥協している結果”に過ぎないのです。

お客様が本当に求めているのは、「他にはない安心感」「社長の顔が見える対応」「品質の高さ」「スピード感ある対応」など、競合他社には真似できない、もっと具体的な価値です。

この“選ばれている理由”を適切に答えられるかどうかが、現事業の方向性を見極める重要なポイントになります。

たとえば、

  • 同業他社と比べて、どんな点が違うか?
  • 取引先やお客様からどんな評価を受けているか?
  • 他社が真似できないノウハウや関係性は何か?

このような「自社の武器」を整理すると、今のお客様の声に応えるために「今の事業を磨くべきか」、あるいは「その武器を別の新しい分野に転用すべきか」が明確になります。

あなたの事業が本当に「選ばれる理由」が明確になっていれば、迷いの半分以上は消えるはずです。

第3の視点:収益構造――「努力が利益につながっているか?」

最後に確認すべきは、お金の流れです。

どんなに忙しくても、どれだけ売上があっても、「利益が残らない」なら、その事業はあなたの時間や体力を奪い続けることになり、長く続けることができません。

ここで重要なのは、売上の大小ではなく、採算の質です。

たとえば、

  • 手間が多い割に利益が少ない「疲れる商品」が多くないか?
  • 仕入れ価格や人件費が「気づかないうちに」上がっていないか?
  • 高単価でもリピートが少ない商品が主力(実はあなたの忙しさの原因)になっていないか?

これらを点検すると「頑張りの割に報われない」、あなたの努力を裏切るような収益構造が見えてきます。

経営とは、闇雲に売上を増やすことではなく、“残る仕組み”をあなたの判断で作ることです。

数字に苦手意識がある方ほど「採算の見える化」によって、事業をコントロールしているという経営の手応えを実感することでしょう。

方向性を決めるための整理ステップ

「どこから手をつけていいか分からない」という方は、先の3つの視点を点検した後、次の3ステップで方向性を紙に書き出し、整理してみてください。

  1. 現事業の“強みと弱み”をリスト化する
    →現状を客観的に見つめ、「続ける理由(強み)」「やめる理由(弱み)」を明確にすることで、「事業の寿命」を考えます。
  2. 市場の変化(お客様の声)を紙に書き出す
    →自社の強みが“今の市場”に本当に通用するかを、自分の直感ではなく、客観的に確認します。
  3. 利益構造を数字で見る(「あなたの努力を裏切っている商品/サービス」を数字で特定する)
    →「続けるなら何を改善すべきか」「新規展開ならどこに活かせるか」を冷静に判断します。

これらを一度整理するだけでも、頭の中の「なんとなくの不安」が「具体的な課題」に変わってきます。その課題こそが“次に何をすべきか”のヒントです。

「やめる」ことは失敗ではなく、“次に進む選択”

事業を続けるかどうかを考えるとき、「やめる=失敗」と考える方が多いのですが、それは間違いです。大切なのは、「続けるかどうか」「成功か失敗か」よりも、“なぜそう決めたか”です。

市場・強み・収益。この3つの視点で熟考した上での決断ならば、それは誰にも文句を言わせない「戦略的な判断」であり、決して後ろ向きなものではありません。

経営とは、常に変化の中で選択を迫られる仕事です。

不安を抱え込まず、迷いを整理し、事実を見つめ、「次にどう動くか」を確信を持って自分の言葉で語れるようになる。その瞬間からあなたの経営は、止まっていた時間を動かし、再び前に進み始めるのです。

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