SWOT分析をやろうとして“固まってしまった”あなたへ
「事業の未来が見えない不安」を抱えていませんか?
「このままで本当にいいんだろうか?」
「次に何をすべきか?」
そう考えて、いざ事業計画書を書こうとペンを握ったものの、例の「SWOT分析」で手が止まってしまう。
「SWOT分析をやらないと事業計画書が書けないのは分かっている」
「強み?弱み?機会?脅威?……何をどう書けばいいのか分からない」
このように感じている小規模企業経営者や個人事業主の方は非常に多いです。
それもそのはずです。なぜなら、小規模事業経営は日々の業務が中心で、ゆっくり分析などやっている時間も余裕もないからです。
加えて、SWOT分析は“コンサル的な難しい言葉”が多く、まるで頭の良い人だけがやる難しい分析かのように、どうしてもハードルが高く見えてしまうのです。
しかし安心してください。SWOT分析は、ポイントさえ押さえれば決して難しい分析ではありません。あなたの事業を“落ち着いて整理する作業”です。
この記事では、数字や理屈が苦手な方でもスラスラ書ける「SWOT分析のコツ」をお伝えします。最終的には、金融機関・行政機関に提示する事業計画書でも評価される「過不足のないSWOT分析」ができるようになります。
なぜSWOT分析が“小規模企業ほど難しい”のか?
「自分の商売なのに書けない」本当の理由
自分の事業なのに、頭の中がモヤモヤするばかりで、強みも弱みもハッキリと書けない。これはよくあることです。真面目な人ほど、このジレンマに陥ります。
例えば、「どこからどこまでを強みと呼んでいいのか、線引きが分からない」という方は多いです。理由は単純です。
- 忙しすぎて振り返る時間がない
- 自分では当たり前に思うことが、強みかどうか判別できない
- そもそも何を“強み”と呼んでいいか分からない
こうした状況は、誰にでも起こり得ることです。
小規模企業が陥りやすい3つの誤解
小規模事業の経営者の方々に、共通する誤解があります。
- 強み=すごい技術だと思っている
- 弱みを書くと“マイナス評価”になると思っている
- 機会・脅威はニュースを読めば分かると思っている
どれも誤解です。全て、自社の現実から考えれば自然と整理できます。
SWOT分析は“頭の良い人の分析”ではない
SWOT分析は決して難しいものではありません。
SWOT分析は、あなたのビジネスを誰よりも知っている、あなた自身が行う「事業の地図作り」です。事業の棚卸しに過ぎません。数字や理屈ではなく、日々のお客様とのやり取りや経験こそが、最高の材料になります。
むしろ、日々お客様と向き合っている“小規模事業者だからこそ書ける”のが、本当のSWOT分析なのです。
最初の一歩――まずは“事実だけ”を並べる
SWOT分析が書けない最大の理由は、最初から「文章」で書こうとしてしまうためです。
主観・願望・希望を入れるとSWOTは失敗します
「きっと売れるはずだ」
「おそらくお客様はこう思っている」
このような“願望”が混ざっていると、金融機関に一瞬で見抜かれるでしょう。金融機関や行政機関は、あなたの「熱意」ではなく、「客観性」を見ています 。
SWOTは、まず事実ベースで書きます。
事実を抜き出す3つの切り口
- 実績(売れた商品・リピート率・口コミ)
- お客様の声
- 数字(対応件数・来店頻度・稼働率など)
この3つだけで、強み・弱みの大半は抽出できます。これらはすべて、あなたが「当たり前」に日々集めている情報です。改めての特別な調査は必要ありません。
あなたの事業の強みは、必ずこの中にあります。
文章にする必要はありません
最初は箇条書きで大丈夫です。
「事実を集める→そこから意味づけをする」
この順番が最も書きやすく、同時に、金融機関にも伝わりやすくなります。
この事実の「意味づけ」が難しいと感じたら、信頼できる第三者に聞いてみるなど、外部の視点を入れてみましょう。自分では気づけなかった強み・弱みが見つかるかもしれません。
強み・弱みは“競合との違い”だけ見れば整理できます
SWOT分析で多い間違いは、強みを“独りよがり”で書いてしまうことです。
強み探しが難しい理由
「当たり前にやっていること」が多いためです。当たり前は、比較しないと強みだと気づけません。 あなたにとって「当たり前にやっていること」は、お客様から見れば「選ぶ理由になる特別なこと」なのです 。
比較すべきは「地域の競合3つ」
難しく考える必要はありません。
- 同業の近隣店
- ネットで検索して出てくる競合
- お客様が比較している相手
この3つだけで十分です。
少なくとも2つは見ておきましょう。複数の競合と並べてみることで、あなたの「当たり前」が「優位性」として浮かび上がりやすくなります。
曖昧→NG/具体→OKの例
- ×接客が丁寧
○初回相談は30分かけて問題整理まで行う - ×技術力が高い
○有資格者が在籍し、修理時間は競合の半分 - ×良い商品を扱っている
○仕入れルートを活かし、他社より20%安価に商品を提供できる
金融機関に対しては、このような「具体性」が何より信用につながります。
機会・脅威は“ニュースではなく、自社への影響”を見る
多くの方が、「景気が悪い」「物価が上がっている」などと書いてしまいがちですが、これは金融機関には全く響きません。新聞やニュースで「景気が悪い」と報道されていても、あなたの地域のお客様の行動が変わっていなければ、それはあなたのSWOTではありません。
ニュースを見てもSWOTは書けません
「AIが普及している」「インバウンドが増加している」
こうした抽象的な情報だけでは、あなたの事業に直結しているとは言えません。
判断基準は“お客様”だけ
外部環境を捉えるコツは以下の通りです。
- お客様の行動が変わっているか
- 購買理由が変化しているか
- 競合が新しいサービスを開始したか
「抽象的なニュース」ではなく、「目の前のお客様の変化」だけを見てください。
外部環境チェックリスト(サンプル)
機会
- 新技術の普及(キャッシュレス決済、モバイルオーダーなど)
- 補助金・助成金の新設
- 地域で特定のサービス・業種の需要が増えている(高齢者向けサービスの利用増加など)
- 競合が撤退・閉店し、空白市場が生まれた
- インターネット検索・SNSでの自社分野の検索数増加
- 地域の再開発により人流が増加する見込みがある(駅前開発、新店舗オープンなど)
- 関連する法改正・規制緩和で事業がやりやすくなる(オンライン手続きの解禁、テレワーク関連の規制緩和など)
- 自治体が地域事業者の支援事業を強化している(商店街支援、販路開拓支援、専門家派遣など)
- 顧客の課題が新しく発生している(=新しいニーズ。物価上昇による節約志向など)
- 仕入れ先や協力会社との協業・共同企画のチャンスが増えた
【機会を考えるときの基準】
- その変化は「自社にとって追い風」か?
- 顧客の行動・需要が良い方向に変わっていないか?
- 制度・市場に“チャンスの穴”が生まれていないか?
脅威
- 競合の値下げ
- 仕入れコストの上昇
- 新規競合の参入(特に大手・チェーン)
- 顧客の購買行動がオンラインに移り、来店機会が減少
- 主要取引先の業績悪化による取引量の減少
- 電気・ガス・物流費の高騰
- 地域の人口減少による市場縮小
- 法律・規制強化による業務負担の増加(安全基準の強化、インボイス制度など)
- SNS/口コミでのネガティブ情報が広がりやすい環境
- 主要仕入れ先の価格改定や供給不安(世界情勢や災害の影響など)
【脅威を考えるときの基準】
- その変化は「自社に負担や減収をもたらす可能性」があるか?
- 競合の動きがお客様の流れを奪っていないか?
- コストや環境の変化が収益を圧迫していないか?
外部環境チェックリストは、「お客様」と「競合」の変化から生まれた具体的な事例です。このようなリストを見るだけで、「あ、うちのお客様もキャッシュレス決済を使い始めたな」などと具体的に紐づくでしょう。
このサンプルをベースに、自社事業向けにカスタマイズしたチェックリストを作っておくと、環境変化に気づきやすくなり、定期的な見直しも簡単にできるので非常に有用です。

項目は多くしない。5〜7個で十分伝わります
SWOTは、たくさん書けば良いわけではありません。
多すぎるほど読み手が困る
金融機関の担当者は1つの事業計画書を数分でチェックします。項目が多いほど、焦点がぼやけてしまいます。読み手は、「あなたは結局、何に集中するつもりですか?」という目で見ています。
見られているのは“内容の深さ”
項目数よりも、なぜそう判断したのか?(根拠)が重要です。例え項目が少なくても、その「根拠」「なぜそう判断したのか?」という深掘りの視点があれば、あなたの事業への理解度が証明されます。
最小限で伝わるテンプレ
- 強み:5項目
- 弱み:5項目
- 機会:5項目
- 脅威:5項目
これだけで十分に評価されます。
まずは「5項目」に絞る訓練をしてください。そして、その裏付けとなる「事実(実績・お客様の声・数字)」をメモするだけで、評価されるSWOT分析の土台が完成します 。
SWOTは書いて終わると意味がありません――クロスSWOTの実践
SWOT分析の本質は、「だから、どうするのか?」という戦略を作る部分にあります。SWOT分析は、次の行動を決めるための「会議」です。そして、その会議で最も大切なのが「クロスSWOT」なのです。
小規模企業こそ“強み×機会”が最重要
大企業のように、弱みを克服する必要などありません。あなたの「得意」と「世の中の需要」を掛け合わせることが、最も効率よく売上につながる道です。
- あなたが得意なこと(強み)
- 市場が求めていること(機会)
この掛け合わせが、売上UPに直結します。
1行で書けるクロスSWOTの形
- 強み×機会:独自の◯◯を活かし、□□の需要を取りに行く
- 強み×脅威:既存顧客との関係性で価格競争を回避
- 弱み×機会:補助金を活用し弱みを改善
- 弱み×脅威:リスクが大きい分野は縮小し資源集中
金融機関は「対策案」を高く評価
SWOT→クロスSWOT→行動計画
という流れが、融資審査において重要になります。この流れの「繋ぎ目」が甘いと、計画は絵空事になってしまいます。あなたの強みを最大限に活かした対策案を示し、金融機関に安心感を与える行動計画に落とし込みましょう。
半年に一度の見直しでSWOTの精度が上がる
事業環境は常に変化しています。特に小規模企業ほど、外部環境の影響を受けやすいです。
一度作ったSWOTは必ず古くなる
あなたのお客様の行動も、競合の動きも、全てが変化し続けています 。
- 競合の参入
- お客様の行動の変化
- 新しい制度
これだけでSWOTは簡単に変わってしまいます。
半年ごとに「1つ改善」で十分
完璧を目指さなくても大丈夫です。例え「半年に1つ」であっても、その変化に対応し続ける姿勢が、あなたの事業の「持続性」を証明するのです。
大事なのは、改善し続ける姿勢です。
金融機関・行政機関に“安心感”を与える
「SWOTを半年ごとに見直しています」
この一文があるだけで、計画性・管理能力の高さが伝わり、信頼度がぐっと上がります。この「安心感」こそが、事業計画書を提出するうえで、最も大切にすべき要素です 。
SWOT分析は難しくない――あなたの商売を一番理解しているのは、あなたです
SWOT分析は、知識や学歴が必要な分析ではありません。あなたが日頃感じていることを整理し、事業の方向性を見つけるための地図作りのようなものです。
何よりも大切なのは、
- 事実に基づくこと
- 競合と比較すること
- お客様の変化を見ること
- 行動につなげること
この4つだけです。
あなたがこれまで積み重ねてきた経験と判断力こそ、SWOT分析を作る最大の材料になります。その材料を元に、自社の現実を落ち着いて整理していけば、必ず「事業の見通し」が立ち、「将来の不安」が小さくなります。どうか焦らずに、じっくり取り組んでみてください。
あなたの事業には、必ず“活かせる強み”があります。



コメント